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男はつらいよ 寅次郎真実一路評論(10)
また、大原麗子演じるマドンナの妖艶な美貌と人妻フェロモンに、同じ宿で夜を共にした寅次郎がよく欲望を抑えられたもんだなと、何だか神妙な気持ちになってしまいました。自分だったら絶対無理だなあ➰。
ごめんなすって」
馬鹿正直すぎるはほどまっすぐです!
こんな時についつい流れでそうなってしまう人だって居るのでしょうがどちらも心が弱ってるのに、そして間違えてはいけない時なのにね
たしかに「つまんない」と言われても仕方ないけど
そんなもんじゃないっしよ、人の道はさ
シリーズ34作目。
OPの夢に、遂に怪獣登場。
何処かで見た事ある松竹唯一の怪獣が現れ、人類は為す術ナシ。日本政府はかつて学会を追われた車寅次郎博士に協力を乞うが…。
たかだか数分の寸劇ながら、怪獣映画のあるあるを踏襲。
ちなみにこの年(1984年末)はゴジラが9年振りに復活した年でもある。
序盤の騒動は、あけみの夫婦喧嘩。さくらたちやタコ社長がなだめ、何とか治まり掛けた所へ、寅さんが帰って来てあけみの肩を持ち、再び大揉め&大喧嘩。
御前様が両成敗。
気分晴らしに呑みに出掛けた寅さんだが、無一文。電話でさくらに断られる。
一晩警察にお世話になろうとした時、隣席の中年サラリーマンが奢ってくれる事に。意気投合し、今度改めて呑みましょうと名刺を貰う。
翌日お礼に行くと…
男は一流証券会社の課長。
朝は早く夜は遅い、大変な仕事。
約束通り呑み交わし、べろんべろんに。
翌朝起きると、見知らぬ家に。そこは、茨城県牛久沼にある課長の家。
課長はすでに出勤。世話してくれたのは…
課長の美人奥さん、ふじ子。
寅さんの鉄則は、惚れる相手は独り身。相手が独り身かどうか、「ご主人によろしく」など聞いて、さりげな~く探りを入れるほど。
が、今回は珍しく…いや、初めて、惚れた相手は人妻。
それも無理はない。だって、大原麗子だもの。
2度目のマドンナ役で、本作でも色っぽい魅力を発揮。
課長役には、こちらも何度か脇役出演している米倉斉加年。ユーモアと悲哀滲ませる好演。
課長が蒸発した! ある日仕事に行ったっきり、出社せず家にも帰っていない。
働くだけの毎日にノイローゼに…?
心配するふじ子を励ます寅さん。
そんな時、課長が故郷の鹿児島に居るとの報せが。
ふじ子は鹿児島へ。寅さんも同行。
さくらたちは心配でしょうがない二人旅…。
郷愁誘う鹿児島の風景…。
思い出の地などあちこち訪ね回るが、結局見付からず。
帰って来てから、元気の無い寅さん。と言うのも…
ふじ子の為に何とかして課長を見付けてやりたい。
その一方で、ふじ子への恋心。
もし、このまま課長が帰らねば…。
そんな絶対思ってはいけない事を心の何処かで思い、醜くて愚かな自分を責める。
そんな時、課長が帰って来て…。
人妻に想いを寄せた事は否めない。
でも結果的に、夫婦の再スタートに一役買った。
これで良かったのだ。
ラスト、旅を続ける寅さんは、晴れ晴れと。
・あけみがすっかり定着。タコとの喧嘩が今回激しい。タコの嫁はスルメ(笑)
・米倉斉加年の酔っ払い演技が見事。サラリーマンの悲哀。わかる、凄くわかる。連休明け、私も怪しいかも(笑)
・マドンナは麗子さま、2度目の登場。変わらず美しい。一日中見ていたい。寅の気持ち、わかる、凄くわかる。
・「俺は汚え男です。ごめんなすって」爆笑。「自分の醜さに苦しむ人間はもう醜くありません」
ラストの麗子さまの泣きを見るだけで価値ありだったが、少々重めの作品だった。まあ最後は晴れ晴れで良しとしよう。
富永課長(米倉)を探すために彼の実家のある鹿児島まで二人で向かう。たしか寅さんは飛行機が苦手だったのでは?という疑問も、大原麗子と一緒にいられるだけで飛行機嫌いも吹っ飛んでしまったかのよう。タクシー運転手(桜井センリ)は値切られてえらい迷惑だったが、鹿児島でのロードムービー風撮影が心地よい。実家に泊まったあとに、旅館に泊まろうとするが、寅さんはタクシー運転手の家に泊まると言い、「旅先で妙な噂が立っちゃ課長さんに申し訳ない」というカッコいい台詞の後に間違って押入れを開けてしまうシーンが最高。
全体的にサラリーマン悲話といったイメージ。朝の6時に家を出て、帰ってくるのが夜中という一流企業の厳しさ。これも自然豊かな茨城の牛久沼を選んだためだが、少年時代に鹿児島の自然とともに遊んだ美しい記憶が彼をそうさせたのだ。ところが寅さんと知り合ったために自由な寅さんの人生に共感して一気に現実逃避して故郷に戻ったのだとも言える。
一方、息子とともに残されたふじ子にとっては寅さんを心の支えの友人として頼りっぱなし。まぁ、寅さんと出会ったマドンナは皆そうだけど、彼女の場合は最悪の事態になれば確実によろめきそうだった。「私疲れちゃった。どこかに泊まらない?」という台詞にゾクっときてしまった。やっぱ俺はみにくい…
無法松の一生の言葉「俺は汚い」…寅さんが人妻に惚れ、旦那が死んでしまえばいいと悪いことまで考えるにいたって、「自分の醜さに気づいた人間はもはや醜くない」という博の台詞が今後も聞かれるらしい。
それにしても今作ではタクシーをやたらと利用していた。一体合計金額はいくらになるんだろう?などとバカなことも考えてしまうが、渥美清も大原麗子も米倉斉加年の3人とも亡くなっていることで感慨深くなってしまいます(最初に観たときはみな健在)。