ギリシャの新鋭クリストス・ニクが長編初メガホンをとり、記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に描いたドラマ。ある日突然記憶を失った男は、治療のための回復プログラム「新しい自分」に参加する。彼は毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに、自転車に乗る、仮装パーティで友だちをつくる、ホラー映画を観るなど様々なミッションをこなしていく。そんな中、男は同じく回復プログラムに参加する女と出会い、親しくなっていく。男が新しい日常に慣れてきた頃、彼はそれまで忘れていた、以前住んでいた番地をふと口にする。新しい思い出を作るためのミッションによって、男の過去が徐々にひも解かれていくが……。ケイト・ブランシェットが絶賛し、製作総指揮に名を連ねた。
林檎とポラロイド評論(3)
当初、鑑賞予定には無かったんですが、評判の良さで急遽鑑賞。座席取れてよかった😌
テーマが独特なだけあってか、展開も独特。
記憶喪失と新しい自分プログラム。
なるほどリンゴの芯ね。
静かに進むなかで、悪魔のいけにえやら、バットマンとかニヤリとする演出。キャットウーマンのとこはついつい笑っちゃったけど自分だけだったみたい、笑ってたのw
医者の告知とか、随所にシュールな演出が光る。
音楽と絵のところも面白かったけど、
ちょっと恐くなった。あの音楽にはあの絵図らと考えるのは固定概念なのかも。
そして主人公のダンスがあまりにも上手で見いってしまった。
これは公開したらもう一度観たいなぁ。
🍎🍊
本作、なかなか奇妙な作り。まず映像サイズがチリ映画の『NO』やポーランド映画の『COLD WAR』でも用いられた4:3のスタンダードサイズ。出てくるガジェットもオープンリールのテープデッキやカセットテープレコーダーにポラロイドのインスタントカメラといったレトロなもの。それらが一見普通の街に奇妙な歪みを添えています。与えられる課題はカセットテープで与えられる。少しずつ難易度が高くなる課題を主人公が困惑しながらこなす様には思わずクスッとしてしまいますが、街の背景には記憶をなくす人々や同じプログラムの参加者らしき人が映り込み、滑稽さと悲哀が綯い交ぜになっています。そして物語の中にポツンポツンと放り込まれる仕草や台詞が遺した疑問符に対する回答が暗示されるクライマックスが残す深い余韻が湖面の波紋のように静かに胸の内に響きます。
主人公が観に行く映画の音声、さりげない会話の中で言及される映画のプロットがさりげなくクイズのような役割を果たしていたりして、どちらも未見なのに正解した自分がちょっとだけ誇らしくなったりする映画愛にも溢れた作品、これは是非とも広く公開されて多くの人の目に触れて欲しい素晴らしい傑作です。