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死への逃避行評論(1)
名前を変え、金持ち男を誘惑しては殺し、ヨーロッパ中を転々とする美しき殺人鬼。
1983年のフランス映画。
話は彼女を追う中年私立探偵“タカの目”の視点で語られるので、序盤はちとタルい。この探偵の背景を描くので必要なエピソードなのだが。
ある金持ちの息子の婚約者の身辺調査を依頼され、登場する。
イザベル・アジャーニ!
当時のこの美幌、魅力! 官能的な色気も漂う。
序盤地味な絵面だった作品の華となり、ターゲットとなる男どもではないが魅了される。
こんな生き方を選択したのは、不幸だった少女時代から逃れる為。悲しみや儚さも滲ませる。
大抵こういう作品の場合(特にヨーロッパ映画の場合)、虜となり、互いに惹かれ恋に落ちる展開となるが、正直中年男と若い女性のラブストーリーは男の妄想で見てて痛い。
本作はそうならず。
娘を亡くした探偵。未だ立ち直れず。
娘の姿をダブらせる。
父性愛。
しかし、それも歪んでいる。
殺人の証拠を隠滅したり、“死への逃避行”を続ける“娘”を陰から助ける。
ある時は“娘”が本気で恋した盲目の建築家を殺してしまう。
あちらが死への逃避行なら、こちらも破滅の道へまっしぐら。
終盤初めて顔を合わせる。
それは悲劇へと…。
確かに悲劇的なサスペンス・ドラマではあるが、もっとこう、スリリングでシリアスかと思ったら…。
何と言うか…、所々ユルい。
音楽もサスペンス映画とは思えないのんびりメロディ。(何だか珍曲『君よ憤怒の河を渉れ』を思い出してしまった)
ツッコミ所も多々。ヨーロッパ中尾行する探偵だが、あれだけすれ違ったりしたら幾ら何でも普通は気付かれるよ…。時折町行く人に話し掛けたりして独白したり、シュールでもある。
深みのある作品なのか、ただの雰囲気映画なのか…。
本格サスペンスを期待したら肩透かしかも。
イザベル・アジャーニと行くヨーロッパ殺人旅として見るなら、まあ…。