3人の高校生と幽霊が織りなす、ひと夏の出会いを描いた短編アニメーション。小説「君の膵臓をたべたい」の装画や劇場版「名探偵コナン」シリーズを始めとするアニメ作品への参加など幅広く活躍するイラストレーターのloundrawが監督を務め、作家・乙一としても知られる安達寛高が脚本を手がけた。都市伝説として噂される若い女性の幽霊「サマーゴースト」は、夏の間、花火をするとその姿を現すという。受験を控える高校3年生の杉崎友也は、スクールカーストに悩む春川あおいや病を抱える小林涼とネットを通じて知り合う。自分が望む人生へ踏み出せずにいる友也と、居場所を見つけられないあおい、そして輝く未来が突然閉ざされた涼には、それぞれサマーゴーストに会わなくてはならない理由があった。川栄李奈が、「サマーゴースト」と呼ばれる女性の幽霊・佐藤絢音の声を担当。
サマーゴースト評論(4)
通常であれば、余白を作ったりして、1時間超えの映画にすることも可能な作品ですが、あえてクオリティーを下げないように無駄を削ぎ落して中編映画で勝負しているのは好感が持てます。
イラストレーターのloundrawによる「初監督作品」としては、上々の完成度だと思います。
こういうキャラクターデザインもアリでしょう。
印象的なシーンや言葉を残しつつ物語は進むので、何度でも繰り返して見たいと思える作品になっていました。
構成も良く出来ていて、最初のシーンもよく考えられています。
このように、「初監督作品」としては、ほぼ満点と言えます。
ただ、以下の2点だけは、少し詰めが甘いかな、とも思います。
1.あおいのキャラクターデザインが可愛いので、なぜスクールカーストで下位にいるのかが考えづらい点。これは、共学ではなく、女子高という設定にしていれば、切り抜けられたと思われます。
2.友也による勝手な想像のイラストの後ろ姿を見て「こんな綺麗な人がねぇ」というセリフは無理があります。このセリフが自然と出てくるような情報を入れたりしておく必要がありました。
この程度のマイナス点しかないくらいに良く出来ていると思います。
これからの活躍が期待できる「期待の26歳の新鋭監督誕生」という、大きな希望を感じられる作品です。
カメラワークや映像表現の美しさ。立ち上げたばかりのアニメスタジオでたぶん限られた予算の中でこれだけの素晴らしい作品が作れるのなら、、もし潤沢な予算で商業作品を本格的に作ったら、、10年後には日本アニメ界の巨匠の1人に数えられると思う。すごい作品だった。
奇才監督の誕生をみた。
映画としての、映像と音楽は大変良く出来ているため、それだけでも観に行く価値があります。
本題のレビュータイトルに関して。
これはストーリーについてですが、短編映画という割には内容が濃く、このテーマならばもう少し描かれるべき過程があったと思います。
長編映画であれば丁寧に描かれていた過程をすっ飛ばして短編映画にしたのがこの映画という印象です。
ただ、あくまですっ飛ばされたのは過程なので少し急だなと思う程度で、伝えたいメッセージはきちんと描かれており、脚本の乙一さんらしいストーリーを楽しませていただきました。
既に小説は購入済みなのでストーリー自体はそちらで補完することとします。
今後このクオリティで長編映画を作られた場合の完成度に期待したい、素晴らしい映画でした。
loundraw初監督作品。今作の最初のビジュアルを見た時に「君の膵臓をたべたい」のアニメ版と似てるなーと思ったら、キャラクター原作を務められていたというので合点がいきました。とても好みのキャラクターデザインだったり、タイトルのストレートさだったり惹かれるものが多く楽しみに待っていました。(サマーとついてるものだからてっきり夏に公開かと思いきや、肌寒くなってきた11月公開でした笑)
今作40分という劇場公開作品としては異例の短さで、自分が今年観た作品の中でも同時上映を除けば1番短い作品でした。メディアミックスはされていましたが、敢えて情報を入れずに初見で鑑賞しました。
loundrawさんのアニメーターとしての魅力が存分に発揮されていました。灰色に近い白を基調とした風景描写、その白さとの対比のように美しく光る青空や夕焼け、夜空。線香花火の小さな閃光すらも見惚れてしまいました。地面の下を水として映す表現も素敵だなと思いました。
物語もサマーゴーストこと絢音の体を探すというもので一貫しているので、無駄な要素が全くない綺麗な映画でした。変に横道に逸れたり、男女の物語だからと恋愛に走ったりなど、余計な事をしなかったのが功を奏しています。自分を見失っている友也、病気を抱えており寿命が差し迫っている涼、同じ学校の生徒にいじめられているあおい、と型にハマりながらも、現代の若者を象徴しているものから、病気という身近ながらも遠いように感じるものまでカバーしているので、脚本を務めた乙一さんの構成力もお見事だなと思いました。そんな3人が同じ目標に向かって力を合わせるのも一種の青春だなと思いました。
絢音がサマーゴーストになった理由は、自殺ではなく他殺という中々に重いテーマでした。絢音の遺体を探すというヘビーな展開を、空を飛ぶなどのファンタジックな世界線が混じりあっているので、ヘビーに感じなかったのも凄いなと思いました。3人が出会ったこと、3人が絢音と出会ったことにより前を向く理由を見つけ、友也は美術の学校へ行き、あおいはいじめっ子に立ち向かい、涼は病気での死後、サマーゴーストとなり、2人を暖かく送り出しました。というストーリーでした。
40分という時間に詰め込まれたひとつの物語がとても面白く、もっとこの世界を堪能したいなと思ってしまった程です。漫画版や小説版も出ているみたいなので、一通り読んでいこうと思いました。新たなアニメーションの時代を体験できる今作、超オススメの一作です。次の作品も楽しみです。
鑑賞日 11/12
鑑賞時間 16:40〜17:30
座席 H-11