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サガン 悲しみよこんにちは評論(6)
映画「サガン/悲しみよこんにちは」(ディアーヌ・キュリス監督)から。
『悲しみよ こんにちは』の作家、フランソワーズ・サガンの
波乱万丈な生涯を綴った伝記ドラマだけど、
「私は弱い存在なのに、仲間は強いと思い込み、
ひと言で私を打ちのめす。容赦ない一撃が襲いかかる」と呟くシーンが
印象的に記憶が残る。
傷心を紛らわすための酒と浪費が増大していくが、最期は孤独に死ぬ。
そんな物語のラストシーン、生前中に「自分の墓碑銘」を
ある出版社から依頼されたらしい。
ひどいね・・と慰める息子に、母親のサガンはこう答えた。
「(墓碑銘) 他人に勝手に書かれずにすむわ」
それは、他人が私の人生を書いたら、たぶん賛美で埋め尽くされ、
本当に私は表現されない、という思いが強いからだろう。
彼女が書いた、彼女の墓碑銘を紹介しよう。
F.サガン 1954年に文壇にデビュー
「悲しみよ こんにちは」が世界的な事件に。
人生と作品を手際よく、片付けたが・・
その死は、本人だけの事件だった」
孤独で寂しい最期を予測したかのような墓碑銘に、胸が熱くなった。
私が自分の「墓碑銘」を書いたら、どんな表現になるのだろう。
怖くて、まだ書けない。(汗)
才能とお金が結びついてしまったことにひどい罪悪感をもってしまうのか、あまりにも奔放、とても寂しがり。とにかく選んではいけない道をあえて進んでいるように見えました。
ところが、なんでだろう、見終わって残った印象はすがすがしかったんです。たぶん彼女が、とんでもない人生を自分で選んで堂々と生ききったから。
印象に「幸せ」を選ぶのには躊躇があったけれど、「老後のためにチェーン店を買ったりしない」生き方を貫いた女の生き様を見せてもらいました。この映画に出会えた私は幸せでした。
最後のシーンがまた素晴らしくて、あまり馴染みのなかったフランス映画に静かに注目していく予感です。あくまで静かに。
ハマってたんですこの映画。
好きな理由は二つ。
① 物悲しい雰囲気
もともとあまり、ハッピーエンディングで、よかったわね〜となる勧善懲悪的なストーリーは苦手。主人公の、いかにも作家らしい刹那的で、破滅へと向かって行ってしまう、その様子が悲しくも美しく描かれてます。飛び出た才能のある作家って、なんかこう、感受性が強くて、生きづらそう。見ていて胸がいっぱいになりました。
② 過去見た映画で圧倒的に一番オシャレ
シンプルなリトルブラックドレスにパール、アンティーク感あふれる金の時計、ヒョウ柄のコートにノーメークで、短い金髪にタバコ。なんとまーオシャレな映画でしょうか。プラダを着た悪魔より、グレースケリーの裏窓より、ティファニーで朝食を食べるより笑、今の「フランス人は服を10着しか持たない」ブーム的なシンプルでミニマムなオシャレは圧巻です。
サガンFの大ファンになりました。最後のお墓のワンフレーズかとても好き。
しかし、映画を見終わってから津波のように押し寄せてくる虚無感。一世を風靡したあのサガンでさえ晩年は淋しいものであった。栄光と陥落。何の為に人は生まれてくるのだろう。
久しぶりに味わう絶望感に頭の中が真っ白になり、正直これ以上生きているのが嫌になりました。
いや、本当に伝えたかったのはきっとそこではないのだろうけど。
そして09'フランス映画祭に来ていたサガンの息子さんは、どのような気持ちでこの映画の宣伝をしていたのだろう。
もう一度観ないとわからない。
でも、もう一度観るのが怖い。
とりあえず“悲しみよこんにちは”を読むことから始めようと思う。
自由を振りかざして、周りの人を大切にできなかったのかな? 否、人を信じ過ぎたのかも。幸も不幸も激しく生きた女性だったんだ。
幸せと持ってるお金の額は必ずしも比例しない。