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陸軍中野学校 開戦前夜評論(2)
本作でシリーズは終了する
何故なら、シリーズは遂に本作劇中に戦争に突入してしまい、もはやスパイがメインとなって活躍する段階を超えてしまったからだ
一応の区切りでシリーズ終了もやむなしだろう
もう一つの理由は本作の公開が1968年3月だからだ
というのも市川雷蔵が、この年の6月に下血し直腸癌であることがわかったからだ
8月には手術を受け退院、2本他の映画を撮ったものの衰弱著しく、2月に再入院してまたも手術を受けるが、もはや病床を離れられず、とうとう7月死去してしまったのだ
もし、市川雷蔵が病魔に犯されなければ、こ人気シリーズももしかしたら第2シリーズがスタートしていたかもしれない
このシリーズはスパイものといいながら、どちらかというと007のような対外諜報活動ではなく、防諜活動がメインだった
やはりスパイの華は対外諜報活動だ
戦後、中野学校が姿を変えて情報活動していく
そんな映画を観たかった
市川雷蔵がジェームズボンド顔負けの対外諜報活動を世界を股にかけて展開する
ボンドガールならぬ椎名ガールが登場する
そんな和製スパイアクションを
雷蔵の虚無的な雰囲気がスパイの酷薄さにぴったりだったのだ
本当に雷蔵の早逝は残念だ
本作の中で女性スパイが登場する
椎名が何故日本人が日本を裏切るのだと問うシーンがクライマックスだ
彼女達は日本人になりすましており、別の祖国を持ちそれに忠誠を誓う人間であったのだ
今ではこんなシーンは撮れはしない
メディアでも、ネットでもバッシングされるだろうし、そもそも企画すら通らない
21世紀の現代は冷戦時代の半世紀昔より、スパイに蝕まれていることが分かる
陸軍中野学校のリアル以上の現実がこの21世紀の日本なのだ