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女囚さそり 701号怨み節評論(5)
思ったけど、梶の台詞全然少ない。「眼」で演技する。
田村正和は若くいつも病気みたいな表情で演技する。彼の役は元学生運動の活動家。この人見てるとなんか行動が間抜けなんだよね、悪いけど。でも、頭脳明晰、運動神経抜群の「さそり」が惚れるストリップ小屋の照明係。細川俊之はサディスティクな元公安の刑事。
とにかく「サソリ」は人間じゃないよ・・みたいな感じ。
周りの男達が情けなく感じる。
今回、さそりを執拗に追うのは警部の細川俊之、また、珍しくラブロマンスが用意され、相手は元学生運動家の田村正和。
梶芽衣子の表情が優しくなってきたのでしょうがないかな。
殺人と脱獄などで追われる、さそりことナミが、田村正和扮する工藤に匿われて心通わせるが、鬼警部児玉の罠に落ちる。
過去三作を独特の映像観で作り上げた伊藤俊也監督が降板して、日活時代からコンビでもある長谷部安春監督に代わりている。
シリーズ全作に関わっている脚本家による内容だが、伊藤監督のようなアングラ怪談調の描写がない分、作品全体のムードもかなり違う。長谷部監督は東映の環境に慣れてないからなのか、演出自体は重めで上出来ではないが、悲劇的な雰囲気は悪くない。ちなみに梶芽衣子は、さそりシリーズでは本作がお気に入りとのこと。
冒頭の警察が式場に強引踏み込むところから、分かるように、警察権力が、不気味に幅を利かす世界になっており、取り調べ時の拷問による冤罪なども日常的になっている雰囲気。
警察官が、女性看守長をレイプして従わせたり、容疑者に熱湯をかける拷問などを行なって障害を追わせたり、自分の手で死刑執行する為刑務所から連れ出したりと、何処の無法国家だ?な場面が続出。過去三作でも警察や刑務官は、悪辣に描かれていたが、ここまで酷くはない。
さそり役梶芽衣子は、変わらずクールな強い目力が魅力的で、元運動家を演じる田村正和の敗北感に苛まれる悲しい男との絶望的な愛と裏切りが胸を打つ。
警察から再び拷問や母親の説得を受けて、心が折れてしまう工藤の弱さと悲しさが切ない。
ただこの場面演技過剰なところもあるのである程度リテラシーがないとギャグに見えるかも。ちなみに隣の席の若者は笑ってた。
そんな工藤を愛してしまった、ナミの最後の行動で、シリーズに落とし前をつけた梶芽衣子のさそり最終作。
そして、あくまでも氷のように冷たい表情。
もう日本のクールビューティと言えば、タランティーノも惚れた『女囚さそり』シリーズでの梶芽衣子にトドメを刺す。
本作ではクセの強いニヒリスト俳優コンビ(田村正和&細川俊之)を向こうに回し、一歩も引けをとらないどころか、涼しげな美しさに一層磨きをかけている。
法の番人でありながら、私怨を晴らす為に自腹で絞首台を作ってしまう細川の変人ぶりが、本作最大のツッコミどころだったかも。
梶が女の怨念たっぷりに歌い上げる主題歌「怨み節」にもゾクゾク来ました。
アクションシーンも素晴らしかったので、もう少し動いている梶芽衣子を見たかった。
公安や刑務所の人々が極悪だなのはお愛嬌。初さそりシリーズが4作目だったことに気づき、凹んだ。