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昭和残侠伝 一匹狼評論(1)
慕情にも似たような事なのかもしれない。
ここまでの3作を見てて、男の矜恃みたいな事を描いているのかと思ってたんだけど、どおやらちょっと違うっぽい。
時代の変換期というか…残り火というか。
近代化の波に押されて蔑ろにされていくモノ達への哀れみのようなものだろうか。
合理的に区分されていく世の中では、義理とか縁とか恩義なんてものを計る物差しが元々ないのであろう。
弾き出されて追いやられてしまうのだ。
それが主人公の側なのだろう。
男も女も、流れているのは「あるべき姿の日本」って事のように思える。
そんな風に思うと、なぜ俺がこれらの作品に惹きつけられるのか合点がいく。
遺伝子がまだ覚えてるのだ。彼らの片鱗を父や母の背中に見てたのかもしれない。
今回もまぁ、複雑な人間模様だった。
そして、なんだろう日本語が綺麗だなぁと感じる。口調はべらんめぇ的なとこもあんだけど、その響きとか単語とか。敬語に際し使う言葉の調べとか心地いいのだ。
スッと入ってくる感じがする。
脚本家も監督も役者も、正しく日本語を理解していたのだろうなぁと考える。
物語の展開は王道な感じもあり先読み出来ちゃう物足りなさはありはするものの…俳優達が牽引してくれる。
健さん然り池部さんしかり。
…交わす視線の行き着く先を見たいと思うのだ。
富司純子さんも美しかった。
あの時代ではあり得ないくらいの美貌なんじゃないだろうか?
台詞にも仕草にも艶がある。
何というか、古き良き日本人の姿を見ているような気分になった。
時代遅れは分かっちゃいるが、ホントに無くしていいのかい?便利さや金で買える幸せだけを求めてていいのかい?
…諸外国では理解し難い価値観なのかもしれない。
昭和残侠伝ってタイトルの意味をようやく理解したような気がした。
もうきっと居ないのだ。
健さんのような考え方をする日本人は、少数でしかなかったのだと思う。
そら、憧れにもなるわなぁ…。
今回の網子も言ってたよ。
「出来る事ならそんな事ぁしたくねえ!でも生きてく為には仕方ねぇんだ!」
日本中がそんな局面に立たされていたのかもしない。
合理化の激流に飲み込まれながらも、川の真ん中で微動だにしない大岩が日本の精神だったのかもな。
「残侠」かぁ…侘しさを感じる。