異端の鳥

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COME AND FETCH ME
地元の悪ガキから痛めつけられた挙句、自分の飼っている白いペレットまでも焼き殺されてしまうという惨い仕打ちを受ける少年... 預けられている家に帰ったら帰ったで "ここにいるのはしばらくの間だけだよ" なんて叔母さんから念を押すように言われてしまう.. この映画の主人公の13才の彼... このドラマが人の感情を冷たくする様な凄惨過ぎる異様性やアブノーマル性をのっけから味わう

His sort summon evil spirits... He can count your teeth... He must be
killed... Drown him. His sort can't swim... Better to burn him. He's the
seed of the Devil
叔母が突然亡くなり、家も焼け、彼は着の身着のままに道路の向くがままに家に帰ろうと道なりに進んでいくとピエタが掛かっている標識に出くわす。その標識が示す通りに村に向かうとそこでいきなりの村人から集団リンチに遭うという手荒い歓迎を受けてしまう。あのピエタは、慈悲深さは一体何？　しかもユダヤ人のことわざの”When a thief kisses you, count your teeth.” なんてシニカルに普段はユダヤ人が他民族に使う格言を逆に使われてしまうなんて、この映画の恐ろしい展開になる心づもりが必要となる前触れになっている。このプロットは、原題にもある "Painted" という言葉より連想される。それは、ユダヤ教の唯一神による啓示を受ける選民思想により、ユダヤ民族の独自性を保つ証として姿・カタチ・まして肌の色までが地元民とは幾分、異なるところから

You a gypsy? Do you know to cross yourself?
モノクロの写真なのに洗練された色彩の違いが区別できるダイナミクスを思わせる映像が、それを表すように自然が雄大過ぎてシンメトリーにさえ見えてくる。また、家の前にある大木の朽ち枯れた入り組んだ非ユークリッド的に並べられた枝が現実主義 や写実主義を追求したナチュラリズム的濃淡のはっきりした絵画にも見えてくる。
人の顔立ちの髭の一本一本、毛穴の一つ一つのち密さが、この映画がモノクロだけでは終わらせない美的に卓越した作品ということができ、それを支えたメーキャップ・アーティストや美術監督の努力の結晶のような映像となっている。付け加えるとするなら、最近の映画にみられるデジタルカメラによる撮影... 手軽でしかもデジカメの特徴として、暗かろうが明るかろうが撮影場所を選ばない利点から重宝されているが、この映画は違う... 質感にこだわる監督が敢えて35mmフィルムで映画「異端の鳥」は撮影されている。監督は、この事を指して "負の勝利" と... 色々な素材を追求した結果から

呪術師・祈祷師(魔女か？)... 医学の進歩の前にアミニズムが支配する世界観
黒死病のような伝染力の強い疫病が蔓延している村に祈祷師の手によって連れてこられた少年。その彼が、”ミイラ取りがミイラになる” というコトワザ通り、少年が疫病にかかってしまう... 生きているのに自分を埋めるための墓を掘る雇い主の老婆の姿を横目で見ながら、何もできない恐ろしさに加え、まだ生きているのに埋められてしまう恐怖。しかし、目が覚めると"罪と死の象徴"ワタリカラスが彼の周りに弧を成すように数羽が... これが宣伝用映画ポスターにフィーチャーされている。

Remember this. An eye for an eye and a tooth for a tooth.
謎の多い作家イェジー・コシンスキの自伝とされている小説 "The Painted Bird" ... 多くの有名な出版社や批評家から絶賛され、その後、真実の暴露によって、絶賛していた全ての方々がその足元をすくわれるとは、まだその段階では、気づいていなかった。彼はホロコーストでユダヤ人の多くが苦しんでいた時、キリスト教徒と偽って叔母のところで生き延びたと出版後しばらくしてから公になり、それと同時にこの小説がオートバイオグラフィーとは無縁の全くの虚構として晒されることとなる。その上、彼の著作物の多くがポーランドの無名の作家の著書の盗用疑惑も起こってしまう始末。彼の脚色されたドラマのような人生の幕切れ... 妻キキに宛てた手紙だけが残されている。

訪れる場所、訪れる場所でたった13才の少年がホロコーストをかいくぐる物語の中に7つの大罪を経験するシナリオと思っていると一つの大罪 ”色欲” に特化している内容になっている... 冷たい詳細な性的描写... 虐待、虐殺、レイプ、殺人、幼児性愛、近親ソウカン、鶏カン、インフォマニア、糞尿、突然変異・異形などといった大人でも尻込みする様な事を13才の少年が経験するには目がタダレるようなシナリオとなっている。

この映画を象徴する言葉「第二次世界大戦の血まみれ時代の終焉に原始的な東ヨーロッパの野生の喚起」と呼ばれ、監督自ら「私の映画は、ちょうど小説と同じように、ホロコーストに関するものではありません、この話は第二次世界大戦に関するものでもありません。 それは”人のもう一つ別の問題”です。火星に着陸した金星の少年と同様にSci-Fi映画にしたのなら、それも上手くいっていると思えることで、それは、少なくとも私の観点からすると普遍的な物語についてです。」

“There's a place beyond words where experience first occurs to
which I always want to return. I suspect that whenever I articulate
my thoughts or translate my impulses into words, I am betraying
the real thoughts and impulses which remain hidden.”
－ イェジー・コシンスキ, 異端の鳥

スラヴ語を知らない人たちがスラヴ諸国の方々と意思疎通ができるようにすることを目的としたインタースラーヴィクという人工言語をチェコ語やドイツ語と共に会話する言葉として使われている。それは監督がこの映画の一連の残虐行為が起こった場所を特定しないことを理由に暗に物語るためで、もう一つの理由として、ハリウッドで活躍する有名な俳優を起用している点が挙げられる。監督が世界的有名俳優にオファーしたことが思いのほかうまくいき、ハーベイ・カイテルの役への承諾は、記念碑であるとまで述べていた。ジュリアン・サンズ、ハーベイ・カイテル、ウド・キアと言った俳優たちが熟視しても見分けのつかない計算され尽くした高度な "Lip-sync" 技術。いわゆる口パクで彼らは役を演じていた。さまざまな国籍のすべての俳優が、作中、インタースラーヴィク・国際補助語で構成された言葉にどのように対応・対処したかは... 最初に各俳優が彼らの母国語の台本を渡され、プロットの内容を熟知した後に、俳優たちが記憶しなければならない人工言語にセリフが翻訳され、プロット・ラインが英語で配信された場合とは違い、唇と口の動きがまったく異なるインタースラーヴィクに変換されている。それによって、唇の同期が細かく示された字幕付きの映像によって視覚的にはっきりとわかるようになり、見分けのつかない "Lip-sync" の完成となっている。
映画全体では、カエテルとサンズは一緒に10分も話すことはほとんどないので、それほど大きな問題ではなかったと伝え聞く。ただしかし、彼らには口パクを許す、意味を取り違えると自分たちのプライドや今まで培ったポリシーやステイタスを全否定する行為ととられても仕方のない事を何故敢えてしたのか？　意味不明となり観終わっても心のどこかに "？" という感覚が残ってしまう。ただ映画の製作者の立場を自ら監督が弁護するように語っている。「誰もが英語で映画を撮るように私に圧力をかけていました。フランス人でさえも... しかし、私はしたくありませんでした。それが映画を台無しにすると私は確信していましたから... 一方で、映画の市場は信じられないほど柔軟ですが、保守的でもあります。英語は悪い映画を救うと誰もが思うかもしれませんが、しかし、映画が根本的に悪い場合、英語でさえ、それは何の役にも立ちません。本当に良い映画は英語を必要としません。 　"逆もまた真です。"」(チェコ・フィルムセンターによるインタビューより抜粋)

“Wouldn't it be easier to change people's eyes and hair than to build
big furnaces and then catch Jews and Gypsies to burn them?”
－ イェジー・コシンスキ, 異端の鳥

ペンキで白く塗られた小鳥を大空に放つと同じ群れの鳥たちに集団で突かれ白い小鳥が哀れにも力尽きるシーン... この事によって、”異端” とされるものの立場がどのように、またいかに扱われるかを短い映像空間の中に端的に表現し、映画の主題のメタファーとしている。

暗い内容の映画にそれに刺激を与えるような性的なトピックを取り入れて、見るものを飽きさせないシナリオの構成に尽きるエピック。ただし、2017年から始まった2年間という撮影期間... この事は仕方のない事なのかもしれない？　後半になると主人公の少年をよく見ると微妙に成長をしているし、髪の毛もシーンの前後ごとで不整合に長くなったり短くなったり、また顔の感じもポッチャリと変わったりと、それに伴いシナリオにもバグりによる幾分歪みのような感覚にも

自分が人としてしてはいけない行為からか？　度重なる罪深き人間のサガを見続けたせいか？　少年が言葉を失い、やっと会えた父親に対しても何故？早く会えなかったのか、何故？叔母に預けられなくてはならないのかを言いたくても言えないもどかしさをぶつけるように父親に冷淡に向き合う少年... バスで父親と故郷に帰るシーン。最後の最後で彼の父親の左前腕に刻まれた数字を見た少年は、長旅の疲れか眠っている父親にそっと知らせるように... 窓ガラスに息を吹きかけて "JOSKA" の文字を... 　これをハッピーエンドと捉えられる心でありたいと思ってしまう。

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第二次大戦下欧州のどこかの田舎の村で、疎開して叔母と暮らしていた少年が、叔母の死により村を離れることになり、何処とも知れぬ自宅を目指し渡り歩いて行く話。

前評判でかなり酷く疎外されたり残酷だったりと聞いていたけれど、そうですか？

確かに何事もなく幸せ、ではもちろん無いし、中盤ぐらいに主人公が直接キツい仕打ちを受ける描写もあったけれど、どちらかというと拾われてお手伝いして寝食提供されるという流れ。
土に首まで埋まったジャケットも虐待じゃないし。

キツい仕打ちを受けるところも、それまでの流れからみると、追い打ち掛けられる前に何でそこから離れなかった？
その時に決意していたってことかも知れないけれど…。
まあ、そこが転機だからねえ。

火事は誰も気付かなかった？
主人公は関係ないけど、列車の件は何故森を待たない？＆ママ何でそこに留まってた？
孤児達はいつ見抜いた？
等は特に気になったところで、全体的に雰囲気作りに振りすぎて、淡々としていたり、わざとらしく感じて演出が鼻についたり。

とはいえ、ストリーやエピソード自体は非情に自分の好み。
揉まれて擦られて、絶望から這い上がりつつ、良くも悪くも｢大人｣になり、色がついていく成長の物語が熱く悲しく恐ろしかった。

太陽の帝国の舞台を欧州にして、少し誇大化した感じ？