医学部出身という異色の経験を持ち、劇場公開もされた「自由を手にするその日まで」などインディーズ映画を手がけてきた天野友二朗の商業映画デビュー作。無口で不器用な会社員の澤田には不妊症をきっかけにうつ病になった妻の存在があった。澤田はそんな妻を献身的に支えていたが、彼自身も次第に精神を病んでいく。そんな中、澤田の同僚として岸本という男が海外企業から転職してくる。澤田とは対照的に自信に満ち溢れた性格の岸本と親しくなるが、岸本の暴力性や猟奇的な一面を目の当たりにしてしまう。そんな岸本に恐怖感を覚える一方で、危険な魅力を放つ岸本のカリスマ性に徐々に魅せられていく。そして岸本から「もっと本能に忠実になれ」と吹き込まれ、心が揺れ動いていく澤田は、女性社員の美奈子と不倫の関係になってしまうが……。「アウトレイジ」「地獄でなぜ悪い」の山中アラタが主人公の澤田役を演じる。
幸福な囚人評論(4)
“幸福な囚人”とは、主人公の定義だと、世間一般的にレギュレーションされている“幸せ”に囚われてしまっている状態の事を指しているようであり、語彙としてはストレートな言い回しである。ストーリーもこねくり回しておらず、精神的に追い詰められた男が、脳内の別人格に焚きつけられる様にその復讐心を爆発させるという単純明快な展開で、その顛末までの微に入り細を穿つ描写は、“クイズ$ミリオネア”の「みの溜め」風効果音や空調ダクト的不穏音を多用することも相俟って、過剰なゴア表現と精神的攻撃演出が心の支柱をボキボキ折っていく効果を生みだし続けているので、クライマックスでの職場ジェノサイドは一定以上のカタルシスが得られる。その後の妄想が生みだしたもう一人の“自分”との決闘は、もう少しアイデアが欲しかったと感じたが、概ねこの“トラウマ”系統のホラー作品としては満足できる水準である。監督の過去作との同一パターン性等、色々とネガティヴな意見も予想されるが、自分としてはこういう過激に精神が荒廃していく類の作品は大好物なので、ワンパターンを怖れず作り続けて欲しいと願うばかりである。編集や構成等の課題も色々目に付くが、それは今後の成長を促す為の布石であり、それを乗り越えるポテンシャルを強く感じさせる人であると勝手に思う。日々の生きづらさを表現する“圧縮”感の演出は、益々進化していて、その凄まじさはスクリーン上に映っている場面に自分も没入されてしまい、鑑賞後の多大な疲労感と悲壮感は次の日を超えないと収まらない程の強烈な印象を残された。鬱憤、鬱屈、自己卑下等々、精神的マゾヒズムに覚えがある人ならば、その世界に埋没させてくれる特殊劇薬作品に値する出来である。但し、いわゆる“鬱映画”なのでメンタルに厳しい作りであることは否定しないし、もし、あの職場がリアルであるなら日本は終わった方がいい。
PS.濡れ場があるのはいいが、何故にトップを隠すのだろうか?余りにも不自然。
マウントの取り合いと陰口の絶えない生産性が低い腐った会社で働く主人公。
残念ながら仕事があまり出来る感じはしないものの、彼だけは腐った行動をしない中、同い年でパキパキの男が配属されてきて、交流し発破をかけられていく展開。
会社以外の描写でも強烈な力関係の描写をみせていき、その上発破というには強烈なモノを被せて来られて、みている側もどんどん陰鬱な気持ちになっていく。
幻視幻聴の描写も増えていき、何が現実かわからなくなって来たところで、まさかの展開にまさかの真実。
オープニングの描写から結末はわかってしまったし、起伏の小ささと描写のマイルドさや荒さに物足りなさあったけれど、ストレスと不快さはなかなか好みだった。
商業映画を撮ったつもりは無いから。って監督は言うだろうなぁ、って言う気がします。が、中途半端な濡れ場の連続に、映画製作の難しさも滲んでる気がしてしまいました。
いずれにしても、職場のシーンが長すぎて。男のトラウマ描写に、もっと時間を割いた方が良いのではないかと思いました。
木嶋のりこ、結構好きなんですけど。微妙どしたw エロ可愛く復活することを待ってます。