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PERFECT DAYS評論(20)
見終わって数日、なかなか言語化できないのですが、気になったところ。
・見上げる人。他のコメントにありましたが、スマホを見ていては目に入らない風景を見ている
・モノクロの写真。就寝後の夢もモノクロ。その意味。
・どうやらトイレ掃除が「心底好き」というわけでもない
・トイレ掃除だけでなく、自宅からトイレをつなぐ道路の風景や移動時間が同じくらいの重みで描かれている
・もちろん休日も
コメントに「平凡な幸せ」だの「日常の大切さを知る」だのといった文句が並んでいますけど、
そういう安易な理解や定義づけを拒否している人に思えましたけどね。
姪を前にそうした話をしていましたよね。
人はそれぞれ、同じ世界に住んでいるようで、実は違う世界を生きていると。
つまり、個人の世界は重なることがない。
影踏みのシーン。
科学的には、人間二人が重なったからといって影が濃くなるわけはない。
モノクロ写真の木々の葉の重なりとは違うのだから。
しかし、「濃くなりましたよ」という主人公は、本当は決して重ならない個人の世界が重なる瞬間をあの時だけは信じたいと思ったか、余命の少ない人への彼なりの優しさか、
いずれにせよ、あり得ない瞬間を待ち続けてここまで来た人なのかもしれない。
個人でいることは牢獄だが、それを受け入れ、諦めて生きている人だから、他人が安易に考える「幸福」に見えるのでは……。
最後の顔アップにした長いシーンの表情の変化(笑っているようにも泣いているようにも見える)は観客の安易な理解を遠ざけるものとしてあるように思いました。
※PROコメンテーターのうち二人が「寝落ちする」と書いてますが、寝落ちするシーンなんてありましたっけ?
いつも本を寝床の脇に置いてから横になっていると思いましたが。
主人公平山の、小さな、平穏な幸せと、時々のエピソード。そのエピソードでの俳優たちが、ひとり一人の出演時間は短いのに、皆、しっかり心に残る。主演の役所のうまさにもよるのだろうけれど。
ゆったりかまえて、ストーリーを求めたりせずに見れば、心を豊かにしてくれる作品だ。