ニュー・ジャーマン・シネマの担い手として、戦後ドイツ映画界を牽引したライナー・ベルナー・ファスビンダー監督が、その名を一躍世界に広めた代表作。第2次世界大戦末期からドイツが復興の兆しを見せ始めるまでの約10年間にわたり、運命に翻弄されるヒロインの悲劇を描いた。戦時下で結婚式を挙げたマリアとヘルマンだったが、ヘルマンはすぐに東部戦線へと送り出される。戦争が終わってもヘルマンは戻らず、マリアは夫の戦死を知らされる。やがてマリアは黒人兵士ビルと結婚し、平穏な生活を手にするが、そこへ死んだと知らされていたヘルマンが戻ってくる。1980年に日本初公開(フランス映画社配給)。2012年、ファスビンダー監督没後30年の特集上映「ファスビンダーと美しきヒロインたち」でニュープリント版が上映。
マリア・ブラウンの結婚評論(2)
初のファスビンダー作品。爆撃の衝撃でヒトラーの顔の絵が木っ端微塵に吹き飛ばされるシーンから始まり、戦後のドイツの首相達の顔写真が就任順に映し出されるラストで締め括られる。主人公マリア・ブラウンの人生にドイツという国の歴史が投影されているのだが、戦前から戦後のドイツの歴史を把握してないと完全に理解し切ることは難しい。ドイツという国をもっと学んでから見直したいと思った。重要な場面で、実際に放送されたラジオの放送が流されるのだが劇中の内容と見事なシンクロを魅せる。第二次世界大戦が終わり軍隊の武装が解除され、今後再武装の可能性が無いことを約束される国民達。しかしその安堵も束の間。時が立ち再武装のニュースがラジオから知らされる。マリア・ブラウンとドイツ国民達の安堵が砕け散るラスト。辿り着く結末がラストの数分前には分かる故に観ているのが辛くなった。
この映画はドイツ映画の中でもファスビンダー監督の中でもとても好きな映画です。
ハンナ・シグラの美しさと逞しさに惹かれます。夫が刑務所に居て、妻が訪ねてガラス越しに話す場面が凄くいい。いつの間にか大声になって、廻りの人達が一瞬静かになってみんなで笑ってしまうシーンです。いつでもどんな時でも、笑いの力は大きい。
ラジオのサッカー中継で、やっとドイツが自信を取り戻した、ドイツ国民皆がおそらく熱狂して喜ぶ瞬間、まさにそのときに、キッチンのコンロで煙草に火をつけてしまう最期が非常に辛いがかっこいい。
会いたくてずっと会えなかった人にやっと会えた時、人間は、わーい!なんて言わないし言えないし涙も出ない。そういったリアルさをこの映画で勉強した、そういう思い出がある映画です。