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プロヴァンス物語 マルセルの夏評論(6)
映画は主人公マルセルの生い立ちから小学生の頃を描きます、時代は19世紀から20世紀の狭間、フランスのマルセイユ暮らしの教師一家と伯父さん一家が連れ立ってプロバンスの田舎の別荘でバカンスを楽しむ様子を長男のマルセル・パニョールの視点、ナレーションで綴っています。
子供の頃の夏休みの思い出は誰にでもあるでしょう、時代や生まれも違うので当時のフランスの人々ほど共感できない面は否めませんね、それにしてもこの映画、異様なほど平板です。
幸いにも事件らしい不穏なことは起こらず只管、愛情に満ちた家族のスケッチが続きます、微笑ましいものの、まるでマルセル一家のホームビデオを見せられているようで違和感を抱きましたが作者のプロフィールを知って氷解しました。
映画では描かれませんが母のオーガスティンは36才の若さで感染症で亡くなっていますから母と過ごした日々は忘れがたい宝物だったのでしょう。今思えば母が手酌で泉の水を飲むシーンで一瞬、躊躇したような演出や洞窟での細菌の話など暗喩だったのかもしれません。
マルセル自身、執筆前に2才の娘を亡くして失意の底にありました、自伝的小説を書き始めたのは幸せの光に満ちていた少年時代に戻りたかったのでしょう。平凡な一家の幸せ物語の裏に秘められた悲話、作者の心を思えば平板なことに執着した真意が理解できたような気がします・・。