ウッディ・アレンが監督・脚本を手がけ、映画ファンの女性がスクリーンの中から飛び出してきたスターと恋に落ちる姿を描いたファンタジックなラブストーリー。1930年代、大恐慌真っただ中のニュージャージー。セシリアは失業中の夫と愛のない生活を続けながら、ウェイトレスの仕事で家計を支えていた。彼女にとって、つらい現実を忘れられる映画鑑賞だけが心の支えだ。そんなある日、お気に入りの映画「カイロの紫のバラ」を映画館で見ていると、映画の主人公トムが突然セシリアに向かって話しかけてきて……。「ローズマリーの赤ちゃん」のミア・ファローがヒロインを務め、「愛と追憶の日々」のジェフ・ダニエルズが劇中映画の主人公トムと彼を演じる俳優ギルの2役を演じた。
カイロの紫のバラ評論(12)
ロマンティックにささやいてくれて…。ウディ・アレン監督、1985年の作品です。
面白かったです。映画館で観たかったなぁ、残念です。
舞台は1930年代、不況まっただ中のニュージャージーの田舎町。古風な題ねと思ったのは、劇中の映画名が、そのまま作品名になっているからでした。
翻弄される映画好きの人妻セシリア、演じるミア・ファローがとても魅力的でした、可愛い。
呆然とエンドロールを迎えましたが、終わる頃には気持ちが落ち着いて、「…だよね」
劇場なら、そこでゆっくりと会場が明るくなるのでしょう。やっぱり映画館で観たかった!
1987年 3月3日 宇都宮アーバンシアター
暇さえあれば映画を見ている自分のような人間にはたまらなく切なくて暖かい映画
当時40歳だったとはとても信じられない、諸々可愛くてたまらないミアファロー 演じるセシリアに起こるまさしく 映画 のような出来事は最後 全て当然であり必然であった かのようにあっさり、すっぱり消え去ってしまう。ジェフダニエルズ演じるギルシェパードも一見するととてつもなく薄情な輩に見えてしまうけど、恐らく一連の出来事はセシリアだけではなく、この二人にとって 束の間の現実逃避 であった というのが個人的な解釈であり、恐らくこれこそウディアレンの 映画観 なのだと思う。
映画なんて見ても何の腹の足しにもならないし、束の間の現実逃避は出来ても映画館を出ればそこには避けようもない現実が待っている。
そんな、素晴らしい映画を見た後に感じるある種の 虚しさ をこれ以上なくチャーミングに、儚く撮ってみせたところがたまらなく良い。
そして何より素晴らしいのは 何故それでも私たちは映画を見てしまうのか という永遠の謎に、ラストミアファローの最高に切なく悲しい笑顔のみで回答してみせるスマートさよ。
また映画を見よう とここまでど直球に思わせてくれる作品は他にはない。大好きな一本。
あととにかくミアファローがかわいい
現実的に考えさせない、ツッコむ気も起きないほどスクリーンの出入りも当たり前のように、
その自然すぎる感じとテンポの良さであっという間だったし、陽気なジャズスタンダードで最後まで楽に観られた。
夢見た人が目の前に現れるなんて、そんなこと実際にあったならそれは心傾くよね。
でもファンタジーを思わせながらも逡巡する心のシーンがいくつもあったとこや、エンディングの場面に現実感を感じさせられて切なく。
まるで境目のような作品で、へたに完全なファンタジーを観るよりずっとしみじみした。
楽しかったから他の作品も観てみようっと。