ベティ・デイビス、リリアン・ギッシュの2大女優共演によるヒューマンドラマ。メイン州の小さな島にある別荘で毎夏を過ごしている年老いた姉妹リビーとセーラ。島の入り江には8月になると鯨が現れ、幼い頃は良く見に行ったものだった……。潮風の香る美しい島を舞台に、老姉妹と、彼女たちを取り巻く3人の老人たちが織りなす人間模様を穏やかに描く。本作が遺作となったリリアン・ギッシュは、カンヌ国際映画祭特別賞を受賞。1988年、岩波ホールで公開され31週のロングランヒットを記録。2013年、岩波ホールの創立45周年を記念し、ニュープリント版でリバイバル公開される。
八月の鯨評論(11)
今から20年くらい前にビデオで借りてみたのだ。
その可憐さにものすごく心ときめいたのを覚えている。
こんなに映画スターでときめいたことも他にない。
そのリリアンが今回見た映画はおばあちゃんだった。
ベティ・デイヴィスもすっかり老けてしまって。
なんだこれは?と一瞬思うが、この二人が今でも映画に出続けているというのが素晴らしい。
それだけでこの映画を見る価値がある。
そればかりではなく、この二人。本当にかわいい。
ベティ・デイヴィスのツンデレに萌え。
ずっと萌えキャラなリリアンギッシュのセーラばあちゃんに萌える。
どんな場面でも二人は私を萌えさせてくれる。
こんなに萌えるのはアニメでも稀である。
往年の大女優を筆頭に、総て大御所でとり揃えられた映画。
2013年にニュープリントされたものを名画座にて鑑賞。
L・ギッシュとB・デイヴィスの共演というだけでもすごい。
もちろんリアル期に私は生まれていないので、全部ビデオ。
お二人とも瞳が印象的な女優さんだった。特にベティの方は
歌のタイトルにもなった「ベティ・デイビスの瞳」が懐かしい。
映画では「イヴの総て」が最高に面白く何回も観た記憶がある。
彼女は実生活でも今作のリビーのような性格で^^;
それをまんま持ってきたのがあの役どころだというのも凄い。
また、マラノフ役のV・プライスは恐怖映画の常連だったので
私はよく知らない。が、マイケルの「スリラー」の怖い声の人で
非常によく知る人物となった。他にA・サザーン、H・ケリー・jr、
若い頃のM・スティーンバージェンも過去の役で出演している。
老いと死、今でいう「老人介護問題」が色濃く描かれている。
当時のメイン州で同じようなことが描かれていたのを実感する。
老人が老人を看る時代。頼る人間もなく(実際には子供がいても)
行く宛のない老人たちの、それでいて死ぬまで尊厳を失わない
凛とした生き様。それが二人の大女優によって淡々と描かれる。
実際の年齢を逆手に取り、リリアンを妹に、ベティを姉に、と
いう配役も面白いが、二人の性格までも見通したような演出が
冴え渡っている。
現在になって観てみて、確かに時代を感じる部分は多かれど、
いつかパートナーを失って老いていく身上と、残りの人生を
美しく楽しく生きていきたいと願う心情は、十分に理解できる。
誰もが美しい過去を憂い(また鯨がやってくると)再来を願い、
目耳足腰に自由が利かなくなった身体に対抗しながら生きる。
だけど想い返した時にいつでもいい人生だったと言えるような
そんな生き方をしていきたいと思うのみ。歳月が総てを物語る。
(往年の大女優の演技の細やかさをあらゆる所作に見てとれる)
なんだろう・・観終わったあとのこの涙は。
鑑賞日:2015.1.31
名監督作品、或いは好きな俳優が出演している映画を選んで観る事が多いのだろうか?
それとも、特別に好きなジャンルの作品があり、その好きなジャンルの作品を数多く観ているのだろうか?
例えばコメディー好きの人なら、ハリウッド作品ばかりでなく、フレンチコメディーなども、お笑い映画と名が付く物ならどんどん観る事にしているのだろうか?
例えば、邦画では夏には、戦争映画は必ず新作が公開されるし、一昔前なら、「寅さん」シリーズや「釣りバカ」シリーズのように、決まったシーズンには必ず公開される映画がある。洋画でも、クリスマスシーズンはクリスマスをテーマに絡めた作品が公開されるなど、その時節と映画は密接に関係しているものだ。
そこで今月は新作公開作品以外で、8月に縁が有りそうな映画を独断と偏見で勝手に私がセレクト「8月に観たい私が選ぶ名画」と題して何本かの名作を推薦してみようと思う。
映画ファンには絶対に観て頂きたい8月に関係ある作品の候補として名を挙げるなら、第1番目の作品は、「八月の鯨」だ。
今年は、東京の単館系劇場の老舗として名高い岩波ホールが、創立45周年を迎えた事を記念して、ニュープリントでリバイバル公開された作品でもある。
そしてこの「八月の鯨」は、岩波ホール史でも公開された当時は、記録的なロングランヒットとなった歴史的記念作品といえる。更に今年は、奇しくもこの岩波ホールの総支配人を務めていた高野悦子さんが亡くなられた。不思議な因縁の作品とも言える。
さて、物語は、ベティー・デイビス演じる気難しいリビーと、年老いても尚も、ポジティブ思考で日々自己の楽しみを見つけ出し、生活に新たな変化を取り入れようと明るく心優しい性格のセーラをリリアン・ギッシュと言う2大女優を迎えて描き出す。
大きな人生の変化も現在では無くなった、年老いた姉妹の日常を描いただけの単調な映画と言えば、単調では有るのだが、しかし、これが実に素晴らしい名画なのだ!!!
これぞ、名作中の名作である。映画ファンであるなら、この映画を観ていなければ死ねない?とはチト大袈裟かも知らないが、それ程にお薦めしたい映画だ。
同じ親から生を受け、そして子供時代を共に同じ環境で過ごし育った家族でありながら、コインの表と裏の様に全く真逆とも言えるような性格のギャップの有るリビーとセーラが、再び年老いて、子供時代に暮していた家に共同生活をする事になって、一夏を送っているその静かな?生活の日々を淡々と描いていくだけの映画でも、そこに流れる人間の姿は、万人に共通する老後の生き方と、気持ちの在り方が見事に描き出されている。
私の駄文では、この映画の素晴らしさを伝える事は到底出来ないので、先ずは是非映画を観て下さいねとしか言えないもどかしさが募る。高齢化社会が問題になっている日本人には決して他人事ではない、自己の老後の気持ちの有り様を熟考し、今から準備を整えたい自己の老後を生きる為の、名作の一つとでも言うべき作品なのです