オーシャン・クライシス 沈黙の核弾頭
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ホテルニュームーン評論(1)
筒井武文監督が教鞭をとる東京藝大大学院映像研究科の国際交流から発展したという本作。単に日本のスタッフやキャストがイランで映画を撮りましたという域にとどまらず、両国の社会状況を反映させ、かつ2国の関わりのあり方にも光を当てる話に仕立てている。鍵になるのは、母ヌシンがかつて日本に出稼ぎに来ていて、そこで娘を出産したというくだり。身重のイラン人女性が地方の工場で肉体労働するという、気も重くなる話ではあるが、日・イ双方の観客に両国関係の一端を見せる意義はあろう。
ただ、その過去は母が娘に隠し続けなければならない秘密なのかという疑問は残る。サスペンスを持続させる仕掛けではあるが、娘も大人なんだし、話せば分かりあえるだろうに…と。永瀬正敏が演じた田中は、現代のパートで母娘にもっと積極的に関わってもよかったのでは。撮影監督・柳島克己による映像の陰影が味わい深いだけに、なおさら話にも深みが欲しかった。