「害虫」「カナリア」「抱きしめたい
真実の物語」の塩田明彦監督が、元「さくら学院」の新谷ゆづみと日高麻鈴をダブル主演に迎えた青春ドラマ。「さよならくちびる」で新谷と日高に出会った塩田監督が、2人を想定して執筆したオリジナル脚本をもとに撮りあげた。重い持病を抱え、生きることに希望を持てずにいた高校2年生の由希は、同年代の麻希と海岸で運命的な出会いを果たす。麻希は男性関係の悪い噂が原因で周囲から嫌われていたが、彼女の勝ち気な振る舞いは由希にとって生きるよすがとなり、2人は行動をともにするように。麻希の美しい歌声を聞いた由希は、その声で世界を見返すべくバンドの結成を決意する。一方、由希に思いを寄せる軽音部の祐介は彼女から麻希を引き離そうとするが、結局は彼女たちの音楽づくりに協力することになり……。
麻希のいる世界評論(2)
新谷さん:レギュラー番組での練習の成果か、舞台挨拶の受け答えのスムーズさが良かったです
日高さん:アイドル時代にはないロックな曲をもっと聞きたかったです
舞台挨拶で二人が監督を困らせていたことや窪塚さんの天然ぶりなど、塩田監督は苦労したんだなーと思える楽しいエピソードが聞けて良かったです。
思い返せば『さよならくちびる』もあまり自分にとってハマっていなかった。ちょっと監督のスタイルが合ってないのかもしれないな…と思いながら観ていた。ちなみに、監督曰く『さよならくちびる』がヒットしたらスピンオフ等をしたかったらしいが、そうでもなかったから…ということでこの形になったそう。うーん、確かに…。
今年は沢山の青春の中の危うさを描く作品が多かっただけに、決定的な違いを覚える。それは、状況に対しての説明や心情がまるで無いのである。音楽映画ではあるのだけど、その中での揺らめきがあまりにも衝動的で唐突。個々のバックグラウンドが強くあるので、そこに囚われすぎてしまっているように思う。
また、凄く硬派ではあるのだけど、咀嚼できるほど優しく見せていないので難しい。劇薬を盛りすぎて、胃もたれしてしまった。監督もオープンエンドで描いたと仰っていたので、フルスロットルで走ったプロットなのはよく分かる。
主人公の二人の眼力が強く、片時も目を離せないのだが、容赦なく突きつけるので疲れた。新谷ゆづみさんの凛とした表情は山田杏奈さんと重ねた。また、日髙麻鈴さんの歌声もディズニープリンセスのような伸びのある歌声で魅力的。さらに、祐介役の窪田愛流さんも初演技ながらオーラを放つ。確かに怒りの感情がワントーンだったのは気になったが、これから伸びしろを感じさせる。
かなり大胆なので見応えはある。その一方で89分では収まりきっていない感情があるように思える。公開されてからの賛否が楽しみだ。