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男はつらいよ お帰り 寅さん評論(20)
短かった。もっと見たかった。
祖父は、時々流れる「男はつらいよ」のTV放送を観ては、日が暮れるのを待つ人でした。亡くなって久しく、もうその姿をあらためることは叶いませんが、この映画で映された景色を通じて、彼の横顔に再会できた気がしています。
さて肝心の内容なのですが、これって『ビフォア・サンセット』でやってた流れそのままですよね?(終わり方は『ビフォア・サンライズ』寄り)
だんご食べようとしたらマカロン出てきたような、「あれ、俺お店間違った?」感に包まれた2時間でした。でもマカロンを食べたい時は初めから洋菓子店に入るんだよなぁ…
男はつらいよを見てきたから、ちゃんと男はつらいよを見せてもらえました。
面白かったというか、幸せでした。
リリーのくだりも、他のマドンナのくだりも、メロンのくだりも、もちろんみつおのくだりも。
あくまでも、男はつらいよなんだなぁって
ちゃんと、男の映画なんだろうなぁって
男は過去を引きずって、女はその時を生きる、男側の映画なんだなぁ。
CGをフル活用して修正に修正を重ねた不気味な映像。
なんじゃこりゃ……、と、呆然とし、白けたままで映画が始まります。
きっと桑田佳祐ご本人はいい気分で歌っていたのだろうと思いますが、エンドロールで渥美清が同じ歌を唄ったのとは比較にもならぬ惨めな出来ばえで、ミスキャストなのが鮮明。
おそらくは、なんらかの大人の事情によってこの大御所歌手を出演させねばならなかった山田監督が、映画人としての矜持にもとづく底意地の悪い処遇を見せたというところだったのかも知れません。
ケチを付けるとしたら、そのあたりが一番目についたところで、それ以外はまずまず普通の寅さん映画でした。