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大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス評論(12)
この1967年は前年に続き東宝特撮への挑戦がさらに拡大していった年で、前年の1966年と合わせて大変重要な年です
1967年公開の特撮映画のトップバッターが本作です
3月公開の春休みを狙い、東宝特撮との直接対決は避けてはいますが、その内容は全く逃げていません
真っ正面から東宝特撮の怪獣映画へ挑戦しています
第一作の監督であった湯浅憲明を、第二作のように特撮担当にせず、監督として復帰させて体制を整えています
特撮映画は特撮を大事に考えられる人間が全体を仕切らないと良いものが撮れる訳はないのです
前作は大人向けになっており第一作で意識したはずの子供とその親が共に楽しめる内容が忘れられていたのをまず修正しています
東宝特撮のゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘が同じ失敗を犯していることで気付かされたのでしょう
怪獣ももっと花のある東宝特撮のラドン、モスラに匹敵する敵怪獣を考えてきます
ラドンもモスラも飛ぶ怪獣なのだから、人気がでるのは飛ぶ怪獣という分析です
東宝特撮が前年はフランケンシュタインをモチーフにするなら、こちらは吸血鬼ドラキュラだ!と真っ正面から挑戦の方向性で企画しています
本気さが伝わり好感が持てます
特撮技術は正直東宝特撮に劣っていますが、逃げずに見せたい絵を優先して撮っています
スパッと車も戦闘機も真っ二つにしてみせるギャオスの超音波は素晴らしい視覚効果です
富士山の噴火、回転作戦、山火事作戦どれも、子供心にはワクワクするものばかりです
冒頭直ぐにガメラを登場させますし、子供をガメラが助けて甲羅に乗せて飛行するシーンは子供にはしびれるような名シーンです
さらにはエンドロールにガメラの主題歌を流してみせる、このプロ魂!
ギャオスの造形は素晴らしく、東宝特撮の怪獣に勝るとも劣らないインパクトがあります
ドラマパートも脚本が上手く大人も飽きずに楽しめます
主演の本郷功次郎も前作と変わらず熱演です
飯場の部下のコンビも良い脇役の仕事をしています
特撮映画をなめた仕事はどこにもなく、当時の自分たちが出来るベストを撮るんだ!という情熱を感じることができます
そこは正しく評価されるべきです
子供達はそれを見抜き圧倒的に本作を支持して大ヒット怪獣映画となりました
本作が成功したからこそガメラは息の長いシリーズとなり、平成にはリメイクまでされることになったのです
1967年の春
怪獣映画は本作を加え、なんと三作が公開され激突することになったのです
それも東宝が特撮映画を公開していないのにです
本作以外の二作とは何か?
ひとつは本作とほぼ同時公開になった松竹の宇宙怪獣ギララ
本作の10日遅れです
もう一つはそのギララ公開の1ヶ月後
日活の大巨獣ガッパが公開されることになるのです
そしてテレビでも東映がキャプテンウルトラと仮面の忍者 赤影を共に4月にスタートさせていたのです
大映、松竹、日活、東映
東宝特撮に当時の日本の映画会社のすべてが同時に挑戦をしたのです
海外作品も4月からタイムトンネルのテレビ放映をスタートさせていました
確かインベーダーもこの年の春放映スタートです
それが1967年の春だったのです
冒頭で富士山が噴火、そこにガメラが飛んでやってくる。中々に飛ばした展開。その後はビジネスの大人の事情が描かれる。昭和ガメラの初期は子供向けでない展開もやってたんだねえ。
ギャオスも割合と早く登場。どうかと思うその造形。牙をもちっとリアルに作って欲しかった…。ガメラも出てきて開始20分で前哨戦。
その後は対ギャオスに稚拙ながら硬派な展開に。(この辺りシン・ゴジラに影響を与えている気がする)
夜の市街戦・空中戦・港での戦い・ラストの肉弾戦と特撮は気合い入っていてまずまず見応えあり。
まあ怪獣映画なのでツッコミつつ楽しむのがいいでしょう。全体のバランスはよく出来てたと感じました。
物語はじめからガメラありきというか、ガメラ当たり前の世界。英一にはヒーロー的な存在。
ガメラの体型からどうやって手を伸ばしたのかわからないけど少年を背中にのせて飛行するシーンもある。
人間も作戦をたてていろいろやるがギャオスには歯が立たない。ガメラが力技でギャオスを仕留める。映画らしいラスト。
タイトルは英一とガメラでもいいかな。
頭部の形が凄いインパクトを残したギャオスは間違いなくガメラシリーズで屈指のキャラクターと思う。
そんな2匹が闘うのだから、楽しい事この上なし。
空中戦と銘打ってるけど、クルクル回るだけのガメラがそれだけ戦えるはずもないし、もう半世紀前の作品になるのかと思えば、許せるよね。