灯台船に乗り込んできた3人のならず者と、船員の闘いを描く。ヴェネチア映画祭審査員特別賞を受賞。製作はビル・ベネンソン、モリッツ・ボーマン。エグゼクティヴ・プロデューサーはライナー・ショーンライン。監督は「早春」(70)のイエジー・スコリモフスキー。ドイツの作家ジーグフリート・レンツの小説を基に、舞台を北海から米ノーフォークに移してウィリアム・マイ、デイヴィッド・テイラーが脚色。撮影は「早春」のチャーリー・スタインバーガー、音楽はスタンリー・マイヤーズが担当。出演はクラウス・マリア・ブランダウアー、ロバート・デュヴァル(ヴェネチア映画祭主演男優賞を受賞)ほか。
ライトシップ評論(1)
ポーランドの名匠イエジー・スコリモフスキの1985年の初米作品。ヴェネツィア映画祭審査員特別賞。
“ジャック物”ではあるが、アクションではない。
極限状態の人間模様をスリリングに描いたサスペンス・ドラマ。
凶悪犯たちは船で逃走しようとするが、夜間の移動は禁止されている。
それを固執して守る船長と紳士的な凶悪犯のリーダーの、一見穏やかそうに見えるが火花散る話し合い。
今にも衝突しそうな凶悪犯手下二人と船員たち。
反撃の行動をしようとしない船長への船員たちの不満。
船内の銃を隠し持つ反抗期の船長の息子。
「キャプテン・フィリップス」のような、ヒリヒリする緊迫感がみなぎる。
ツッコミ所もある。
船員たちは拘束されず、通常業務を行い、船内を自由に歩き回る。
が、これがかえって緊迫感を煽ったりする。
船員たちと凶悪犯手下二人は何度かいざこざがあり、船内でばったり出くわした時、いつ何処で睨み合いが爆発するか分からない。
凶悪犯のリーダー、キャスパリに扮したロバート・デュヴァルがさすがの巧演。紳士的ではありながら、血の気が濃い手下二人が従順する辺り、恐ろしさを感じさせる。
船長ミラーに扮するクラウス・マリア・ブランダウアー。行動を起こさない理由である海軍時代の過去を息子に語るシーンは引き込まれる。
息子役の少年もナイーブな感じで好助演。
映画は息子のモノローグで語られ、重要ポジションでもある。
派手な映画ではない。
しかし、使命を守る船長の視点、息子の語りの視点など別角度から見ると、また違った味わいがある。