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JSA評論(14)
苛烈な独裁体制のなかで、しかも徹底した洗脳教育があるなかで、南北の和解というのはとても難しい状況にあるのは事実。だとしても両国ともに、平和的な統一を求めているのもまた事実なのだろう。小競り合いが本格的な衝突に発展しないこと。それが何より重要で、それは現実の状況とも重なる。
休戦の緊張状態がいよいよ戦争の局面を迎えるかもしれないという昨今の状況、悪い国家は滅ぼせばいいという安易な考えで、方法としての戦争に訴えるということがなにを意味しているのか、日本に住む僕たちは改めて考えなくてはいけないだろう。
独裁者がいかに偽善的で、いかに凶悪なものであったとしても、勇ましいだけの戦争論には明確にノーを突きつけるべき。体制の転覆や民主的な国家体制への移行だけでなく、半島の平和的な統一がなされた後に想いを馳せても、分断がもたらした両国の溝を埋めていく作業が困難を極めることは想像に難くない。考えるべきことはたくさんある。
そこで、一体何が?と思わせる演出から、現実には信じがたいことですが、北と南の兵士が徐々に打ち解けていき、酒まで交わしてしまったという内容に驚きました。
更に実はお互いをかばっているという姿に感動しました。
そして、最後、冒頭に観光客が撮った1枚の写真を見て、もう、切なくなりました。
最初に地上波で見て以来、久しぶりに鑑賞。思えば、ソン・ガンホとイ・ビョンホンという二大スターを誕生させたこの映画。しかも監督はパク・チャヌクだ。『オールド・ボーイ』での暴力シーン全開とまでは行かず、かなりメッセージ色も強いことがよくわかる。
1999年10月28日午前2時16分。11発の銃声。二つの死体。答えは藪の中なのか!こんなにわかりづらく作らなくてもいいものを・・・なんて考えてもみたのですが、イ・ヨンエという美人女優をスイス監視委員会兵士としてわざわざ起用するため、興行成績を上げるために映画っぽい作りにしてあると冷めた目で観てしまっていた。
それでも序盤の推理とサスペンス。どれが本当の話なのかわからないまま、真実が描かれていく。地雷の恐怖。さらに一発触発である境界線なのに、緩いところもあり、そこから始まる友情物語なのです。
38度線によって分断された同じ民族。しかし、国家や政治を抜きにしてみれば、やはり兄弟なんだということが痛いほどわかる。南北統一したいという気持ちや、分断させられたのはアメリカなんだという反米意識も伝わった。しかし、いい話にもかかわらず、自殺という手段で決着つけようとすることには賛同できず、ラストでは統一したいと願う観客を裏切っているのではないのかと疑ってしまった。
思惑は見事に外れた。
兵役から解放されるのに後数か月。そんな若い兵士の義理と人情に揺れ動く話。
命の恩人に対して報いる方法が今風の軽いノリで始まってしまう悲劇。結末が見えない日活の無国籍映画のように安易に平和を語ってはならない。そんな教訓話のようだ。
曖昧の形で収束することが最も良いのだ・・・・そんな爺の戯言に思わず納得してしまいそうになった自分に腹立ちを覚えた。
手を伸ばせば届くところに親兄弟友達がいる。にも拘わらず、互いに殺されないために自らを欺き続けなくては生きられない人々。心の在り方はどうあるべきなのだろう。
またしても、答えは風に巻かれてしまった。