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007 スカイフォール評論(20)
スクリーンでのスペクタクル体験は至福だったなぁ、と思い出と共に。
指揮官としての、Mのギリギリの決断、やさぐれながらも自身の使命・宿命に生きる道を選ぶボンド。
エンタメなんだけど、人として、職業人として、どうあるべきかを考えさせてくれる、厚みのある作品なのだな、とあらためて感じさせられた。
ここまで極限状態におかれているような環境にはないが、自身の職業倫理、矜持を持って、社会で生きることはしていこうと思う。
(2023.08.27に再鑑賞)
◯作品全体
ジェームズ・ボンドシリーズとしてのヴィンテージの香り、というのもそうだが、演出もヴィンテージの香りがした。
例えばサイバーテロリスト特有のハック画面。コラージュ画像で標的を嘲笑う、あの感覚はヴィンテージ。ただ、Mに対するシルヴァの感情を考えると、少し方向性が違うような演出にも感じた。一方でMへの執着が上司と部下というよりも母と子のような感覚も感じたので、子供のからかいとして見れば、あのハック画面は関係を示すのに有意義だったのかもしれない。
サイバーテロによる国家機関への攻撃、と考えるとイギリス国家対テロリストではあるけれど、物語が終盤に進むにつれ、元MI6職員の怨嗟による個人的な復讐劇になっていく。過去にも関わる物語で、ストーリーラインやスカイフォールの生家にもヴィンテージの香りがあるが、ジェームズ・ボンドシリーズの、そしてスパイ映画として国家や組織の思惑をも巻き込んだ、スケールの大きい物語を期待していた身としては少し肩透かしではあった。
物語を振り返ってみると組織だったり国家の謀略の要素は薄くて、キャラクターエピソードの色が濃い。今までの作品もボンドのキャラクター性で物語を進めるものが多かったからその点もヴィンテージではあるけれど、「ヴィンテージ」と「古臭さ」は背中合わせだなぁ、と感じたのも事実だ。
◯その他
・列車の上のアクションでトンネルとか障害物がある時に一旦戦闘中止するの、何回見てもシュール。
・他の方の感想で、女性に対するボンドのジェントルマンっぷりは無情さの裏返しである、というような趣旨のことが書いてあって膝を打った。ボンドガールはボンドに接近することを自分の意思のように感じている(ように映す)けど、ボンドは仕事の上で利用してるだけなんだよなぁ。たとえ不幸になろうとも納得してそうしてるならラブロマンスでいいじゃん、というのもわかるけど、最終的の自分を不幸にすると分かった上で近づく・近づかせるのってもやもやしちゃうな。
「ノータイムトゥーダイ」鑑賞後に、「カジノロワイヤル」「慰めの報酬」を鑑賞する。
本作だけ感想を残していなかったようなので、取り急ぎメモ。
5作中、最もストーリーがシンプルで分かりやすい。
なので、物語の展開に気を取られない分、
作り込まれたシーンやショットの美しさを余裕をもって堪能。
ずっぽりのめり込める。
そこへもってして相反するような激しい物語が合わさったなら、
ただ殺伐とするに終わらず、ストイック、ハードボイルドにおける「美」を感じずにおれまい。
またインパクト大のキャラクターが目白押しで、
孤高のボンドもチーム戦、家族、絆の幕開けとなり、
これまでになかったワクワク感がいい。
にもかかわらず最後の最後で去ってしまうのがMなのだから、
憎い演出だ。
そうして一皮剥けたダニエルボンド。
リアルとの融合
(ダニエルグレイグに合わせて年をとる設定や、実際前作で脱臼した肩が被弾という古傷扱いとか)の臨場感も、
架空だが、どこかにジェームズボンドは存在しているような余韻を残しており
ただのハチャメチャスパイものに終わらないところがまたいい。