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日本海大海戦 海ゆかば評論(5)
ただ、もっと好戦的な内容かと思っていたが、せつの言葉からは反軍国主義が伝わってくるのだ。三原の演技に比べて、沖田の演技はまずすぎるのだが・・・
冗長すぎる個々のエピソードはあるものの、金貸しに精を出す佐藤浩市とか、石炭をくべるガッツ石松なんてのは、性格もかなり面白。
バルチック艦隊との決戦が始まる直前における細かな描写。特に艦内を掃除したり、水兵達が身を清めたりするところは興味深いところだ。さらに創作ではあろうけども、決戦前夜に軍楽隊が望んで演奏会を催すシーンが美しい。死んでしまうかもしれない身を案じ、個々の水兵が故郷の映像とともにドボルザークの「新世界第二章家路」に聞き惚れるところだ。時代を考えるとありえないのだが。
日露戦争という勝ち戦であっても犠牲者はつきもの。血肉が飛び交うスペクタクル映像からは悲壮感漂っている。もしかして三笠は沈没したのでは?とも思ってしまう。どんな戦争でも不幸になる人間はいっぱいいるということだ。これを勝ち戦として歓喜とともに描いていたら最悪の作品となったであろう。
・前半は恋愛で戦争映画になるのは後半から。なぜ恋愛多めなんだろと思ったら脚本が笠原和夫と知り納得
・戦闘シーンはリアルで迫力あった
これは朕の戦争ではないと宣戦の詔勅でハッキリ言ってるではないか。
明治天皇は戦争に反対だったのである。
この精神は昭和天皇にも受け継がれ大東亜戦争に反対している。
ではなぜ戦争が始まったのか。
立憲君主に政治の実権はない。政府の決めた事には逆らえないからである。
沖田浩之と三原じゅん子のど~~~でもいい話がグダグダ続いた後、
いざ決戦と思いきや連合艦隊がボコボコにやられる。
何ですかこれ?
海戦史上稀に見る大勝利でバルチック艦隊の艦艇のほぼ全てを損失させた戦いですよ。
大艦隊同士の艦隊決戦としては史上稀に見る一方的勝利を収めた戦いですよ。
いい加減にしてもらいたいですよね。
第一作「二百三高地」 1980年8月
第二作「大日本帝国」 1982年8月
第三作「日本海大海戦 海ゆかば」 1983年6月
名作の「二百三高地」と同じシリーズなので、同様に高いレベルで日本海海戦を余すことなく描いてくれるのだろうと期待すると相当ガッカリします
それを求めるなら東宝の1969年8月公開の「日本海海大戦」を観て下さい
というか「二百三高地」自体、東宝が「日本海大海戦」のレベルの作品を結局製作しなかったので東映が作ったようなものでした
東宝の「日本海大海戦」で決定版と言える作品を出したのですから、再度同じ企画で製作してもそれを上回る作品は無理というものです
なので変化球の内容で作られています
東宝版と同じタイトルですが、東映版に「海ゆかば」というサブタイトルがつけられています
海ゆかばは、旧日本海軍の葬送の軍歌です
つまり東宝版では不足している、戦争の悲惨さ、そして女性が共感できる物語で再構成する
その製作方針が「海ゆかば」に込められています
「海ゆかば」の曲自体はエンドロールで流れます
なので日本海海戦がどのような海戦であったのか?
それを俯瞰した映画を観たいなら、本作ではなく東宝版をご覧になるべきです
本作は海軍軍学隊の主人公の目を通して、観客が日本海海戦に参加するというものです
それによって、私達は如何に世界史に残る完勝の大海戦であっても、実際には戦争というものほ地獄絵の世界であり、人間性の欠片もないものなのだとのメッセージを伝えることが狙いです
前半のメロドラマは、ヒロインの三原順子の演技がもう一つで全く不発です
沖田浩之は女を泣かせる男としての実在感はあるのですごが、こんどは戦争の悲惨さを伝えるに相応しい雰囲気がなく後半の海戦での修羅場も不発です
佐藤浩市の砲員長とのエピソードも今ひとつ胸をうちません
とはいえ、決戦前に戦闘を恐れて自殺した水兵が町の人々から非国民などと罵られるなか、軍学隊が葬送の演奏をするシーンは胸を打って涙した良いシーンでした
海戦自体の特撮は、中野昭慶特技監督が、東宝版では師匠の円谷英二の引退作品である東宝版に挑戦する形となるため、かなりの気合いを入れて頑張った映像です
本作の狙い通り、海の上の地獄を特撮で良く表現できていると思います
戦闘中は爆煙で暗く曇った映像なのは納得できますし、波浪が激しいのも良いと思います
ただ「天気晴朗なれど浪高し」の表現は見かけないものでした
東郷司令長官は東宝版も本作も、三船敏郎が演じています
本作撮影時、三船敏郎は63歳
東宝版の出演時は49歳
実際の東郷司令長官は海戦時57歳です
教科書にも載っている有名な旗艦三笠の艦上で指揮を執っている絵画のイメージにどちらがより、ちかいのかというと、それは本作です
その彼が東宝版より明瞭に右手を左に向けます
そこだけは東宝版に勝っています
また、その東郷司令長官がバルチック艦隊が確実に対馬海峡を通ると断言する根拠をこう述べます
バルチック艦隊のロジェストベンスキー提督は、米国の仲介による講和交渉が近いことから、日本艦隊との決戦を行って少しでも有利な状況で講和会議を迎えたいはずだと
この視点は、あまり他の映画やドラマなどでも紹介されないものですが、とても納得できるもので
これも東宝版に勝っていました
このようにところどころ良い部分もあるのですが、あくまで東宝版があってのことです
本作は東宝版の補完作品として観るのが良いと思います