1959年に市川崑により映画化された大岡昇平の同名小説を塚本晋也の監督、脚本、製作、主演により再び映画化。日本軍の敗北が濃厚となった第二次世界大戦末期のフィリピン戦線。結核を患った田村一等兵は部隊を追放され、野戦病院へと送られる。しかし、野戦病院では食糧不足を理由に田村の入院を拒絶。再び舞い戻った部隊からも入隊を拒否されてしまう。空腹と孤独と戦いながら、レイテ島の暑さの中をさまよい続ける田村は、かつての仲間たちと再会する。戦場という異常な空間で極限状態に追い込まれた人間たちが描かれる。共演にリリー・フランキー、俳優デビュー作の「バレット・バレエ」以来の塚本監督作品への参加となるドラマーの中村達也。
野火評論(20)
5日分の食料を持って出たため、部隊に戻ると、「せめて5日間入院してろ」などと言われ再び病院へ行くも、「肺病ごときにかまってられるか」と追い出される。食料は野戦病院で没収されたため、地元民から強奪したりもした。そして、また部隊と病院の往復・・・
廃教会で地元民の男女が現れるが、女の方を殺してしまった田村。さまよい続けて民家から塩を見つけ、やがて別の隊の日本兵4人と行動を共にする。「俺と一緒にいれば弾当たらないから」と言う伍長(中村達也)。敗戦濃厚のため、セブ島に輸送するためパロンポンに集合せよという命令が伝わっていたが、行軍中、一斉射撃の虐殺に遭ってしまう。死にかかった伍長は狂気に満ちていた。ニューギニアで人肉を食ったことがあるとか話していたが、「俺が死んだら、ここ食っていいぞ」などとうわ言のようにつぶやく。
一方、安田(リリー・フランキー)の命令でタバコとイモを交換させられていた永松(森)と再会するが、猿の肉だと食わされた干物。安田と永松は人を殺して人肉を食っていたのだ。永松はとうとう安田を殺すが、彼もまた狂気にかられていた・・・
累々と横たわるおびただしい死体の数。残虐な描写などは、戦争の激しさよりも、兵士の誰もがもう戦えなくなっていたことの方が心にガツンと訴えてくる。そして人肉問題。この描写があるかないかで戦争の悲惨さが・・・しかも正常な人間として生きていけない状態が見て取れる。
が、ただむごたらしい、グロテスクな画が多いだけの映画に成り下がってしまってる感がある。
作った方の、結局のところの意図や、なんでそんな画をあえていれているのか、その表現の感覚がわからないし、なにをもって「それでよし」としてる作品なのか意味不明。
ただむごたらしくグロテスクにしたら戦争映画だ、訴えられる、とカン違いしてるような作品。
あと、セリフの声が小さすぎる。
ボソボソしすぎ。
疲弊した様子を表現したいのかもしれないが、やたら主人公などの声が小さく、それでいて女性が叫ぶ声や爆撃などの音は大きい。
映画として作る側の無神経さ、不親切さもうかがえる。
これらの点で、完成して見直した製作陣はなんとも思わなかったのだろうか。
よって、「★ゼロ」。
カッコよく生きた男たちが描かれることも多いですが、
こちらはただただグロく壮絶なほどの悲惨さしかありません。
それと対称にレイテ島の自然派どこまでも美しい・・・
ただ、本当になかなかないほどの悲惨さなので、
こういう描写が苦手な人にはおすすめできないかも。
私もスクリーンなら無理だったかも。
小説を読んでいる際には、自分の脳内でリアルな映像化を拒絶している部分があったのだが、ここまで苛烈にフィリピン・レイテ島での70数年前の出来事を映像作品として見せつけられると逃げようがない。
塚本晋也の現代日本の状況に警鐘を鳴らさねばという気概、そして初演以来5年たった2019年夏にこの作品を上映する映画館の姿勢に襟を正される。
日本が、このような作品が制作されても、上映出来ない国にならないことを切に願うし、そのためには私たちは何をしなければならないのかを深く考えさせられる作品でもある。
<2019年8月14日
毎年、夏になると強烈な数々の反戦映画を上映してくれる”反権力の気風、気概の高き都市”のミニシアターで鑑賞。>
「どう? 戦争ってひどいよね?つらいよね? でしょ!」
というような意図でセンセーショナルに打ち出しただけの作品かもしれません…
でも今のわたしたちは、戦争の記録や記憶を見聞きしただけに過ぎませんし
遠い異国で実際に起きている内戦やテロ事件をニュースで報道されていても
今のわたしたち世代は、実感として受け止めることのできるヒトは少ないでしょう…
戦争を知る世代しか… 本当の所、とやかく言う権利はないかもしれません…
【本作に関わらず、世にあるすべての『戦争映画』は
イコール『反戦映画』であると結論付けます!】
…と、はっきりわたしには断言することはできません。 …が、言わせて下さい!
良いように解釈してくれとは言わない
理解してくれとは言わない
嫌悪感を抱いてもらっても構わない
なぜならば、それが今のわたしたちの抱く『戦争』なのだから…
塚本晋也 監督 作品 『野火』
わたしも、いつか観よう、観ようと思ってはいたのですが踏ん切りがつかず…
そんなある日、外出からの帰宅後、テレビをつけたら丁度放送してた訳で
もうわたし画面に釘付けで、90分間動くことができませんでした(笑)
BSとは言えよくぞ!放送してくれた!民放局にお礼申し上げます!
では、クリント・イーストウッド監督作『父親たちの星条旗』より
冒頭のモノローグを記して、わたしの感想と代えさせて頂きます…
「戦争を分かった気でいる奴はバカだ。
特に戦場を知らぬ者に多い。
皆、単純に考えたがる。
善 対 悪
ヒーロー 対 悪者 …。
だが実際は我々の思うようなものではない。」