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アラビアのロレンス 完全版評論(20)
砂漠の地平線から現れるロレンスを自分の目で発見する感動はこの映画の肝でもあったと思う。このシーン、TV画面は論外だが映画館でもちょっと寂しい。
この映画はシネラマかIMAXで見たい。(4KTVだとどうなんだろう?)
この大スペクタクルの
いきなり、えーっ!?っていう始まりのシーンが好き。
これを観て、俺も映画好きになったってことかなと思ったのを、今でも覚えている。そういう意味で、自分の中では印象が強い映画。
1、仲間になるには仲間に信用される事
港占領に向かう際に進軍から遅れたアラブ人を砂漠の中で救いにいったロレンス、このお陰でアラブ人から信用されるようになった。
2、アラブ人が民族同士で対立していたのをまとめた
ロレンスがある一族と仲間になるも、別の一族とのいざこざが発生してしまう。それをロレンスは治める。
3、ロレンスはハッピーだったのか?
大佐になったロレンスが最後に故郷(イギリス?)に戻るところで映画は終わる。アラブ人をまとめてダマスカスを占領したのは大きな功績だが、それまでに虐殺をしてしまいオカシクなる。政治的なことは別の人に任せて彼は故郷へ帰る。映画の冒頭は彼がバイクを高スピードで走らせて死ぬのだが、これは自殺なんだろう。
前知識は持ってかなかったが、勝手に冒険スペクタクルだと…
史実を描きながら、それ以上に1人の人間の胸の内を描いた作品だった。
まず映画の冒頭で、ロレンスがマッチ棒を吹き消してから、夕陽をバックにした砂漠が漠然と現れるのが、めちゃ興奮した。これからここでなにがおきるんだ?っていうわくわく。
そしてそのなかでロードムービー的に繰り広げられるロレンスの旅。
しかし、ここで注目すべきなのは、国同士の関係や、幹部の思惑、そしてロレンスが何をしたか、ではなかった。彼の心情をずっと観客は考えるのだ。(最初にロレンスがどんな人物だったかというテーマから語られるのでそうなる)
そして彼は何も語らない。どんな表情をしても観客には彼の真意がわからない。ヒントとして与えられるのは、彼の周囲にいる者たちの憶測だけ。そしてきっと誰も彼の真意はわかっていない。だからこそ観客も考えるし、正解のない映画として楽しめるのかもしれない。
劇中、上司や敵のボスとかは割と本性で動いてるんだけど、(見栄や自分のプライドとか名誉を優先したり、常に利益を気にしている)ロレンスだけは、人への奉仕とか、生きることの本質だったりが見えている。でも砂漠に行ってから、裏切りや救えなかった命を目にすることで、自分の信念が揺らいでいくんだよなあ。これって意外と普遍的なことで、誰しも環境が変わると今まで持っていた概念を覆されたりすることが平気であるんだよね。そのとき人はどうなるのかって話だと思うんだけど、ロレンスの場合はどんどん衰弱していってしまって、最後には自分の魂なくなってしまってましたな… かわいそうに。
ここで思ったのは、ロレンスはずっと砂漠の民のために尽くしてきて、それが彼にとって“生きるということ”だったと思うんだけど、それが徐々にできなくなってしまってたんじゃないかな。誰かを救う事に意味はあるのかって葛藤と、自分の本能(心からしたいこと、今まで胸の内に秘めていた部分)が明らかになっていくに連れて、今までの自分じゃ保てなくなってきていた、というか…
辛い話ですよね、だからラストもあんな感じで。びっくりでした。4時間見続けて、スカッとさせてくれるわけじゃないんだなあ、と。そういうところもデヴィッドリーンは天才だと思う。
本来は自分探しの旅とか、心の旅とかで自分を発見したり、向き合ったりすると、人生がハッピーな方向に向かう気がするんですよね、(違うかな)でも彼の場合は違って、逆に追い詰められちゃってたのが印象的だった。でもそれって彼が悪いんですかね、社会が悪いんですかね。
この映画は、本当に繰り返し観れば彼に対する印象はどんどんかわっていくとおもうし、観る人によっても違いそう。